京都大学の小川誠司教授、スウェーデン・カロリンスカ研究所、東京大学医科学研究所などの国際研究チームは、急性骨髄性白血病(AML)の患者さん1,563人分の検体を詳しく解析し、白血病細胞の「エピゲノム」の状態によってAMLを16のタイプに分けられることを明らかにしました。成果は英国の科学誌『Nature』に掲載され、日本時間2026年7月9日に発表されました。
遺伝子の「使われ方」から白血病の個性を読み解く
AMLは、患者さんによって性質や治療の効きやすさが大きく異なる病気です。これまでは主に遺伝子の変異(設計図の書き間違い)をもとに病型やリスクを分類してきました。一方、エピゲノムとは、同じ設計図のなかで「どの遺伝子を、どのくらい使うか」を決める仕組みのことです。研究チームは、DNAがどれだけほどけて読み取られやすくなっているかを網羅的に調べる手法(ATACシーケンス)を中心に、遺伝子変異や遺伝子の働き、DNAのメチル化、1細胞ごとの解析などを組み合わせました。その結果、AMLはクロマチン(DNAとたんぱく質の複合体)の状態から16のグループに分類でき、それぞれが異なる遺伝子変異や細胞の成熟段階、遺伝子の働き方の特徴を持つことがわかりました。従来のゲノム解析だけでは見えなかった多様性です。さらに、この分類は患者さんの予後と強く関連しており、今のリスク分類に加えることで予後をより正確に予測できることも示されました。
一人ひとりに合った治療選びにつながる可能性
AMLの治療では、病気の性質を見きわめて治療の強さや移植の必要性を判断することが大切です。より精密な分類ができれば、患者さんごとに最適な治療を選ぶ「精密医療」の助けになると期待されます。研究チームは今後、より簡単で低コストな診断法の開発や、それぞれのグループに合った治療法の探索を進めるとしています。
出典:東京大学医科学研究所 プレスリリース「白血病の『個性』を決めるエピゲノムを解読 ―大規模クロマチン解析による新たな分類と層別化治療―」
同じ「急性骨髄性白血病」という診断名でも、その中身は一人ひとり違う――そのことを改めて感じさせてくれる研究です。日本の研究者が中心となった大規模な成果が、将来の治療選びに役立つ日が楽しみですね。