白血病 電流で発見 北九州の研究グループ 新技術 微量血液 正確に判定

白血病の判定で、血液に特定の周波数の電気を流すことで正常な白血球とがん化した異常な白血球を分別する新たな技術を、財団法人ファジィシステム研究所(北九州市若松区)の今里浩子主任研究員と、九州工業大大学院(同)の山川烈(たけし)特任教授(脳情報工学)の研究グループが開発した。ごく微量の血液で高精度の判定結果が得られることから、学校や職場での日常的な集団検診への導入も可能で、白血病の早期発見へ可能性を広げそうだ。16日、横浜市での国際シンポジウムで発表する。研究グループは、血液細胞で誘電率(電気をためておく度合い)が異なる点に着目。がん化した白血球と正常な白血球を混ぜた溶液に、電極から特定の周波数の電気を流し、異常な白血球だけを生きたまま電極に吸着させることに成功した。この技術は、0・001ミリリットルの血液があれば可能。分離した白血球を培養すれば、がん細胞は数日で急激に増殖するため、白血病に罹患(りかん)しているかどうか診断が容易にできる。グループによると、判定精度も従来より格段に高いという。今里研究員らはこれまでに開発した、ポリスチレンやガラス、ゼラチンの混合液から、それぞれの粒子を分別する技術を応用した。今後は白血球、赤血球、血小板が入り交じった完全な組成の血液から、がん細胞を分別する周波数の特定を進め、白血病の確定診断を可能にするシステムを5年内に開発したいという。白血病判定は、血液検査で血球数の異常が確認された場合に行うのが一般的で、既に症状が進行している例が多い。また、検査は技師が顕微鏡で目視したうえ特殊装置による解析が必要で、費用も時間もかかる。2人は「この判定技術が確立されれば、患者の肉体的負担が軽減され、医療費の負担も軽くなる」と話している。■経過観察には有効か久留米大医学部の岡村孝教授(血液内科学)の話 確定診断に応用できるかは未知数だが、白血病の治療を終えた患者の経過観察には、簡便で有効な検査法になるかもしれない。分別できる白血球の異常が腫瘍(しゅよう)性か炎症性かなど、どのレベルまで診断が可能なのかを明確にし、精度を100%にする必要がある。=2010/04/16付 西日本新聞朝刊=

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