白血病の治療法

白血病の治療は種類・病期・年齢・体の状態に応じて選択されます。主な柱は「化学療法」「分子標的薬療法」「造血幹細胞移植」の三つです。

1. 化学療法(抗がん剤治療)

複数の抗がん剤を組み合わせ、白血病細胞を根絶することを目的とします。急性白血病では大きく以下の2段階で進めます。

段階目的内容期間目安
寛解導入療法完全寛解(顕微鏡レベルで白血病細胞が見えなくなる状態)を目指す複数の抗がん剤を集中投与。白血球をいったんほぼゼロにする1〜2コース(約1〜2か月)
地固め(寛解後)療法体内に残存する約1億個以上の白血病細胞を根絶する寛解導入と異なる薬剤を使い複数コース継続数コース(数か月〜)
維持療法
(ALLなど)
再発を防ぐ飲み薬中心の軽度な治療を継続計2年間程度
「完全寛解」は「完治」ではない
完全寛解とは、顕微鏡で白血病細胞が確認できない状態を指しますが、体内にはまだ数億個の白血病細胞が残存していると考えられています。地固め療法で分子遺伝学的完全寛解(PCR でも検出されない状態)を目指すことが重要です。

2. 分子標的薬療法

がん細胞に特有の分子(タンパク質・遺伝子)だけを狙い撃ちにする薬で、正常細胞へのダメージを減らしながら効果を発揮します。

BCR::ABL1 阻害薬(TKI)

CML やフィラデルフィア染色体陽性 ALL に使用。イマチニブ・ダサチニブ・ポナチニブ等。毎日の内服で深い分子反応が得られ、TKI 中止(TFR)が一部患者で可能になりつつある。

FLT3 阻害薬

AML の約30% に見られる FLT3 変異に対して使用。ミドスタウリン・キザルチニブ等が化学療法と併用される。

IDH1/IDH2 阻害薬

AML の一部で見られる IDH 変異に対応。イボシデニブ(IDH1)・エナシデニブ(IDH2)等が使われる。

BCL-2 阻害薬

AML・CLL に使用。ベネトクラクスは高齢 AML 患者への低強度化学療法との組み合わせで有効性が示されている。

3. 造血幹細胞移植

正常な造血能力を持つ「造血幹細胞」を移植し、血液を正常に造る力を再構築する治療法です。

ドナー選定 HLA型マッチング 骨髄バンク等 前処置 大量抗がん剤 全身放射線 幹細胞輸注 点滴で注入 (骨髄・末梢血・臍帯血) 生着・免疫再建 新しい造血スタート GVHD 予防・管理 GVL効果(移植片対白血病効果) ドナー由来リンパ球が白血病細胞を攻撃 ① ② ③ ④
造血幹細胞移植の流れ(同種移植の場合)
種類幹細胞の出所特徴
同種移植HLA が適合するドナー(血縁・非血縁)GVL 効果が期待できる。GVHD のリスクあり
自家移植患者自身GVHD なし。再発リスクはやや高い
GVHD(移植片対宿主病)とは: ドナー由来の免疫細胞が患者の正常組織を攻撃する副作用です。急性 GVHD(移植後3か月以内)は皮膚・腸・肝臓に、慢性 GVHD はより広範な臓器に症状が出ます。免疫抑制剤で管理します。
GVL 効果(移植片対白血病効果)とは: 一方で、ドナーの免疫細胞が残存する白血病細胞も攻撃してくれる有益な効果です。これが同種移植が再発防止に有効な理由の一つです。

4. APL(急性前骨髄球性白血病)の特別な治療

AML のサブタイプで PML::RARA 融合遺伝子を持つ APL は、かつては最も致死的な白血病でしたが、現在は最も治癒率が高いタイプです。

  • 全トランス型レチノイン酸(ATRA): ビタミン A 誘導体。芽球に分化を促し白血病細胞を成熟させる「分化誘導療法」として機能する。
  • 亜ヒ酸(ATO): ATRA と組み合わせることで、多くの低中リスク APL では抗がん剤なしで完全寛解を達成できる。
  • 治癒率: 低〜中リスク APL では長期生存率90%超が報告されている。

5. 免疫療法・CAR-T 細胞療法

再発・難治性の白血病に対して、近年新しい免疫療法が使われています。

ブリナツモマブ

CD19 と CD3 を同時に結合する二重特異性抗体。T 細胞を B 細胞系 ALL に誘導して攻撃させる。再発難治 ALL に承認。

イノツズマブ オゾガマイシン

CD22 を標的とした抗体薬物複合体。細胞毒素を白血病細胞に直接届ける。再発難治 ALL に使用。

CAR-T 細胞療法

患者自身の T 細胞を遺伝子改変し、白血病細胞を認識・攻撃するよう「プログラム」した後に点滴投与する。再発難治 B 細胞系 ALL に対して国内でも承認済み。

6. 副作用と感染対策

強力な化学療法は正常な白血球もいったん根絶するため、重篤な感染症のリスクがあります。このため治療中は無菌室(クリーンルーム)での隔離管理が基本です。

  • 発熱性好中球減少症(FN): 好中球が極端に減少した状態での発熱。即座に広域抗菌薬投与が必要。
  • 出血: 血小板減少による。血小板輸血で対応。
  • 貧血: 赤血球輸血で補う。
  • 悪心・嘔吐・口内炎: 制吐剤や口腔ケアで軽減。
  • 晩期合併症(特に小児): 成長障害・不妊・二次がん・認知機能への影響。フォローアップが重要。
治療方針は血液内科専門医とのよく相談のうえで決定します。がん診療連携拠点病院の「がん相談支援センター」では、無料・匿名で相談できます(患者さん以外も利用可)。

参照元

※本ページは一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診療・治療の代替となるものではありません。診断・治療については必ず血液内科専門医にご相談ください。