東京大学医科学研究所の岩間厚志教授らの研究グループは、弘前大学、京都大学と共同で、ダウン症のお子さんに起こる「ダウン症関連骨髄性白血病(ML-DS)」の発症にかかわる仕組みの一端を明らかにし、2026年4月15日に発表しました。成果は米国血液学会の学術誌『Blood』のオンライン版に4月8日付で掲載されています。
2つの遺伝子異常が同じ「スイッチの不調」を起こしていた
ダウン症の赤ちゃんの約10%には、生まれてすぐに「一過性骨髄増殖症(TAM)」という血液の異常がみられます。多くは自然に落ち着きますが、数年後に約20%がML-DSを発症するとされています。研究グループはML-DSの患者さん203例の遺伝子変異を調べ、STAG2とEZH2という遺伝子の異常に注目しました。マウスを使った実験や、遺伝子の働き方を調節する仕組み(エピゲノム)を詳しく調べる解析を組み合わせた結果、この2つの異常はどちらも「ポリコーム複合体2」と呼ばれる、遺伝子のオン・オフを調節する装置の働きを弱め、共通した遺伝子の変化を引き起こしていることがわかりました。さらに、その結果として働きが強まるPTK2(FAK)という酵素が新たな治療の標的になりうることを見つけ、PTK2を阻害する薬(デファクチニブ)が白血病細胞の増殖を抑え、本来の血液細胞への成熟を促すことも確かめました。
子どもにやさしい治療開発への手がかり
ML-DSは小児の白血病のなかでも特別な配慮が必要な病気で、ダウン症のお子さんは抗がん剤の副作用を受けやすいことも知られています。病気の仕組みに直接はたらく薬を探す手がかりが得られたことは、将来の治療の選択肢を広げるうえで大切な一歩です。まだ細胞や動物での研究段階で、すぐに治療に使えるものではありませんが、研究グループは新しい治療戦略の開発につなげたいとしています。
出典:東京大学医科学研究所 プレスリリース「ダウン症関連骨髄性白血病の病態に関わるポリコーム複合体機能異常を解明」
ダウン症のお子さんを育てるご家族にとって、TAMやML-DSは気がかりな言葉かもしれません。こうした基礎研究の積み重ねが、子どもたちの体にやさしい治療につながっていくことを願っています。心配なことがあれば、かかりつけの小児科・血液内科の先生に遠慮なく相談してみてください。