欧米では多いが日本では希少 ── 慢性リンパ性白血病(CLL)とは

慢性リンパ性白血病(CLL:Chronic Lymphocytic Leukemia)は、成熟したB細胞(免疫を担うリンパ球の一種)ががん化し、血液中・骨髄・リンパ節に蓄積する病気です。欧米では白血病の中で最も多い型ですが、日本での発症率は非常に低く、年間10万人に約0.3人と欧米の10分の1以下とされています。その理由は遺伝的要因と考えられており、日本では白血病全体の中でも比較的マイナーな存在です。

とはいえ、患者さんにとっては深刻な病気であることに変わりありません。また近年は診断技術の向上と人口の高齢化で日本でも診断数は増加傾向にあります。


CLLの主な症状と特徴

CLLの最大の特徴は進行が非常にゆっくりであることです。早期には無症状で、健康診断の血液検査で偶然発見されることも珍しくありません。進行すると以下の症状が現れます。

  • リンパ節腫脹(首・わきの下・鼠径部のしこり)
  • 脾臓・肝臓の腫大による腹部膨満感
  • 貧血による倦怠感・動悸・息切れ
  • 免疫低下による感染症のかかりやすさ
  • 体重減少・寝汗・発熱(Bサインと呼ばれる全身症状)

患者の多くは50歳以降の中高年で、65歳以上が中心です。


「経過観察」から始まることが多い

診断されても、すぐに治療が始まるわけではありません。早期(Rai分類ステージ0〜Ⅰなど)では「watch and wait(経過観察)」が標準的な選択です。進行が緩やかであれば、治療の副作用を避けながら数年単位で定期通院を続けることも珍しくありません。


治療薬の進歩 ── BTK阻害薬・BCL-2阻害薬の登場

薬剤種類特徴
イブルチニブ(商品名:イムブルビカ)BTK阻害薬1日1回経口服用。年齢を問わず第1選択薬。高齢者にも使いやすい
アカラブルチニブ(商品名:カルケンス)BTK阻害薬(第2世代)心臓への副作用が少なく改善されたイブルチニブ後継薬
ベネトクラクス(商品名:ベネクレクスタ)BCL-2阻害薬リツキシマブとの併用で再発・難治性CLLに有効。固定期間投与が可能
FCR療法化学免疫療法フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ。若年・体力のある患者向け

遺伝子診断が治療選択を左右する

CLLでは診断時に17p欠失・TP53遺伝子変異・IGHV遺伝子変異状況などを調べることが重要です。特に17p欠失やTP53変異がある場合は化学療法への反応が乏しく、BTK阻害薬やBCL-2阻害薬が強く推奨されます。遺伝子検査の結果によって治療戦略が大きく変わるため、血液内科専門医による精密診断が欠かせません。


出典・参考情報

  • 中外製薬「おしえて白血病のコト」CLL解説:oshiete-gan.jp
  • キャンサーネット「慢性リンパ性白血病の治療」:cancernet.jp
  • 日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)」:jshem.or.jp
  • JALSG「慢性リンパ性白血病」解説:jalsg.jp

Harryからひとこと

妻が患ったのはAML(急性骨髄性白血病)でしたが、血液がんの世界を学ぶほど、CLLという「欧米では多いのに日本では少ない」という不思議な病気のことが気になっていました。進行がゆっくりで「経過観察でいい」と言われても、患者さんにとっては毎回の検診が心臓に悪いほど不安なはず。そんな方にこそ、「ゆっくりした病気にはゆっくり付き合える治療がある」という現代の進歩を知ってほしいと思います。

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