これまで、成人の急性リンパ性白血病(ALL)の治療成績は、小児と比べると大きく見劣りしていました。小児ALLの5年生存率が90%を超える一方、成人では50%を下回ることも珍しくありませんでした。しかし2024年、その格差を大きく縮める研究結果が発表されました。
3年生存率が68%から85%へ
メイヨークリニック・セント・ジュード小児研究病院・メモリアルスローン・ケタリングがんセンターが共同で行った第3相臨床試験の結果が、世界最高峰の医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」に掲載されました。
この試験では、BCR::ABL1陰性のB細胞性ALL(B-ALL)の成人患者で、最初の強力な化学療法後にがん細胞が検出されなくなった方を対象に、地固め療法にブリナツモマブ(免疫療法薬)を追加する群と、通常の化学療法のみの群を比較しました。結果は明確でした——3年生存率が68%から85%へと、17ポイントも改善しました。
ブリナツモマブとは
ブリナツモマブは、免疫細胞(T細胞)とがん細胞(B細胞)の両方に結合する「二重特異性抗体」と呼ばれる薬剤です。まるで橋渡しをするように、T細胞をがん細胞のそばに連れてきて攻撃させる仕組みです。すでに日本でも一部の適応で承認されており、今回の結果はその適用範囲がさらに広がる可能性を示しています。
この試験では効果が想定以上だったため、試験が早期終了され、対照群の患者もブリナツモマブを受けられる措置が取られました。「結果の大きさに驚いた」と研究者たちはコメントしています。
Harry からひとこと
成人の白血病患者にとって、「大人だから治りにくい」というイメージは長い間つきまとってきたと思います。私の妻も成人での発症でしたから、この研究結果には特別な感慨があります。もちろん今回の試験はB-ALLという特定のタイプが対象ですが、「成人と小児の差を縮める」という方向性は、これからも続いていくはずです。免疫療法という新たな武器が、治療の風景を変えつつあります。
参考:St. Jude Children’s Research Hospital プレスリリース(2024年)/New England Journal of Medicine 掲載論文(2024)
