国立がん研究センターは2024年4月3日、同センター鶴岡連携研究拠点の横山明彦氏らが、東京大学、米コロラド大学、カナダのラヴァル大学と共同で、白血病を引き起こすタンパク質「NUP98-JADE2」がゲノムに作用する仕組みの一端を解明したと発表しました。成果は3月6日に学術誌Nature Structural & Molecular Biologyに掲載されています。
「PZPドメイン」がゲノムの目印を読み取る
白血病の一部では、2つの遺伝子がつながってしまう「融合遺伝子」ができ、そこから作られる異常なタンパク質が細胞のがん化を引き起こします。NUP98という遺伝子が関わる融合遺伝子は、急性骨髄性白血病などの中でも予後が悪いタイプにみられることが知られています。
研究チームは、JADEタンパク質の中にある「PZPドメイン」という構造に注目しました。その結果、この部分がDNAとヒストン(DNAが巻き付いているタンパク質)の両方に結合し、ヒストンH3のメチル化の状態によって選択的に結合することを明らかにしました。さらに、HBO1という酵素がどこにアセチル化という目印を付けるかを、状況に応じて制御している仕組みも見いだしました。
患者さん・ご家族にとっての意味
今回の成果は基礎研究の段階で、すぐに新しい治療につながるものではありません。しかし、病気を起こしている分子の働きが詳しくわかれば、そこを狙い撃ちにする薬を設計する手がかりになります。研究グループは、JADE複合体を標的とする分子標的薬の開発により、治療が難しい白血病の新たな治療法の確立につながることを期待しています。
白血病の治療は、こうした基礎研究の積み重ねから生まれた分子標的薬によって大きく進歩してきました。目立たない研究の一歩一歩が、将来の患者さんの選択肢を広げていきます。
出典:国立がん研究センター「白血病を引き起こすタンパク質がゲノムに作用するメカニズムを解明」
目に見えない小さな分子の世界で、病気の謎が少しずつ解き明かされていくのは本当にワクワクします。この地道な研究が、いつか治療の難しい白血病と闘う方々の力になる日を楽しみに待ちたいと思います。
