ATL(成人T細胞白血病・リンパ腫)とは
白血病にはさまざまな種類がありますが、日本に特に多い型の一つが ATL(成人T細胞白血病・リンパ腫、Adult T-cell Leukemia/Lymphoma) です。ウイルス(HTLV-1、ヒトT細胞白血病ウイルス1型)が原因で発症する、世界的にも珍しいウイルス関連白血病です。
HTLV-1とは ── 日本に特有のウイルス
HTLV-1ウイルスは、感染しても大多数の人(95〜97%)は生涯発症しません。しかし感染者の約5%が、長い年月を経てATLを発症します。日本国内のHTLV-1感染者は推計約108万人(2023年時点)で、九州・沖縄地方に多く分布しています。
主な感染経路は:
- 母乳感染(最も多い、母から子へ)
- 性行為感染
- 輸血(現在は献血スクリーニングで実質ゼロ)
ATLの病型と治療の現状
ATLには進行の早い「急性型・リンパ腫型・慢性型(予後不良)」と、比較的緩やかな「くすぶり型・慢性型(予後良好)」があります。急性型・リンパ腫型は標準的な抗がん剤(LSG15レジメンなど)で治療しますが、完全寛解後も再発率が高く、造血幹細胞移植が検討されます。
特筆すべき薬剤として、モガムリズマブ(Mogamulizumab)があります。CCR4というタンパク質を標的にした抗体薬で、ATLに対して世界初の分子標的薬として日本で先に開発・承認された薬です。
国立がん研究センターが切り開く新治療:CCR4 CAR-T細胞療法(2024年)
2024年7月、国立がん研究センターは画期的な発表を行いました。ATLに対する 「CCR4標的キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法」 の臨床開発を開始したというものです。
この療法では:
- 患者から採取した白血球に「CCR4を認識するCAR遺伝子」を導入する
- 改変したT細胞がATL細胞を標的にして攻撃する
- 既に承認されているモガムリズマブ(抗CCR4抗体)と同じ標的を、より強力な細胞療法で攻める
国立がん研究センターと米ペンシルバニア大学が共同研究を行い、商業化はARC Therapies株式会社(国がん発ベンチャー)が担います。将来的には固形がんへの展開も視野に入れています。
出展:国立がん研究センター プレスリリース 2024年7月11日「成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)などへの細胞療法開発が始動」(https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2024/0711/index.html)
ATL患者さんへのメッセージ
ATLは長年「治療が難しい白血病」として知られてきましたが、モガムリズマブの登場や移植技術の向上、そして今回のCAR-T療法の開発によって、確実に治療の選択肢が広がっています。特に九州・沖縄にゆかりのある方でHTLV-1感染が判明している場合は、定期検診を欠かさず、早期発見・早期対処が大切です。
Harryからひとこと:
AMLを経験した妻と話していると、「同じ白血病でも全然違う病気なんだね」と改めて感じます。ATLは日本特有の地域性もあり、九州・沖縄出身の方にとっては他人事ではない疾患です。HTLV-1の検査は妊婦健診で実施されていますが、一般の人への啓発はまだ不十分な面があります。このサイトを通じて、ATLの存在と新しい治療の希望を少しでも多くの方に届けたいと思っています。
