白血病治療中の最大の敵のひとつ ── 感染症
化学療法や骨髄移植を受ける白血病患者さんにとって、感染症は命にかかわる重大な合併症です。治療によって白血球(特に好中球)が著しく減少すると、体の免疫機能が大幅に低下し、健康な人なら問題ない細菌や真菌でも重篤な感染症を引き起こすことがあります。
特に好中球数が500/μL未満になる「発熱性好中球減少症(FN)」の状態では、38℃以上の発熱だけで緊急入院・抗生物質治療が必要になります。
日常生活での感染予防:基本の「き」
| 場面 | 具体的な対策 |
|---|---|
| 手洗い | 食事前・排泄後・外出後に石けんで30秒以上丁寧に洗う。アルコール消毒も有効 |
| 口腔ケア | 柔らかい歯ブラシで毎食後歯磨き。うがいも習慣に(口内炎・歯肉炎の予防) |
| マスク着用 | 外出時・人混み・医療機関では必着。不織布マスクが推奨 |
| 人混みを避ける | 好中球が低い時期はショッピングモール・電車混雑時間帯などを避ける |
| ペット・植物 | 土いじり(庭仕事)はゴム手袋着用。動物の糞の処理は他の人に頼む |
| 傷を作らない | けがをしないよう注意。電動ひげそりを使用、爪はやすりで整える |
食事での感染予防(好中球が低い時期)
- 生もの(刺身・生牡蠣・生卵など)は避ける:腸内細菌や食中毒菌のリスク
- 未殺菌ジュース・チーズを避ける
- 調理後は2時間以内に食べる:常温放置は細菌増殖の温床
- 新鮮な食材を十分に加熱
- 皮は厚く剥く:果物の表面には細菌・カビが付着していることがある
「発熱したらすぐ受診」── 発熱性好中球減少症への対応
化学療法中・治療直後に体温37.5℃以上になったら、すぐに担当医・病院に連絡してください。これは「様子を見ていい熱」ではありません。好中球減少期の発熱は緊急事態であり、数時間で敗血症に進行することがあります。
以下の症状もすぐに医療機関へ連絡するサインです。
- 悪寒・震え
- 咳・喉の痛み・鼻水
- 歯の痛み・歯茎の腫れ
- 皮膚の赤み・発疹
- 腹痛・下痢
- 排尿時の痛み・頻尿
医療機関での対応
好中球減少中の発熱では、医師は原因菌を調べる血液培養を採取しながら、広域スペクトルの抗生物質を速やかに静脈投与します。また状況によっては:
- 抗真菌薬の追加(カビ・真菌感染の予防・治療)
- G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤で好中球産生を促進
- 次の化学療法サイクルを延期・減量
出典・参考情報
- 国立がん研究センター「感染しやすい・白血球減少」:ganjoho.jp
- 国立がん研究センター中央病院「日常生活での注意点」:ncc.go.jp
- 国立がん研究センター中央病院「主な抗がん剤の副作用とその対策:感染症について」:ncc.go.jp
Harryからひとこと
妻が治療中、面会時に「手を洗ってからね」と何度確認したことか。感染症がいかに怖いか、身をもって知りました。当時はコロナ禍の前でしたが、面会の度に消毒を徹底していたことが懐かしくもあり、切なくもあります。白血病治療中の患者さんにとって、「手洗い」や「マスク」は当たり前のことのように聞こえますが、それが命を守ることに直結しています。家族も含めて、徹底した感染対策を続けてほしいと思います。
