「寛解しました」の後に残る微小な白血病細胞

白血病治療が成功し、骨髄検査で「芽球が5%未満 = 完全寛解(CR)」と判断されても、実は顕微鏡では見えないレベルの白血病細胞が残っていることがあります。これを MRD(微小残存病変、Minimal/Measurable Residual Disease) といいます。

MRDが陽性(白血病細胞が検出される)のか、陰性(検出されない)のかによって、その後の再発リスクが大きく変わることが明らかになっています。

MRDとは何か ── どれくらい精密に検出できるか

通常の顕微鏡での骨髄検査では、約100個の細胞中1個の芽球(=1%以上)が白血病細胞と判断されます。

MRD検査では:

  • フローサイトメトリー(FCM)法:1万〜10万個の細胞中1個の白血病細胞を検出可能
  • PCR法:白血病細胞特有の遺伝子融合(BCR-ABL1など)の断片を10万〜100万個に1個のレベルで検出可能
  • デジタルドロップレットPCR(ddPCR):さらに高感度な新技術として注目されている

小児AMLでMRD測定が治療成績を改善(2023年・国立成育医療研究センター)

2023年11月、国立成育医療研究センターと京都大学が共同で実施した小児AMLの臨床試験(AML-12)の成果が発表されました。

  • 3年無イベント生存率:63.1%
  • 3年全生存率:80.3%(過去の報告の中で最良の成績)
  • MRDが「最も強力な再発予測因子」であることを確認
  • 今後は化学療法のみで管理するか、造血幹細胞移植を追加するかの判断にMRDを活用する方向性が示された

出展:国立成育医療研究センター プレスリリース 2023年11月8日「小児の急性骨髄性白血病の治療成績が向上 MRD測定結果を利用した最適な治療の実現へ」(https://www.ncchd.go.jp/press/2023/1108.html)

MRD陰性化が「治癒」の目安になりつつある

成人のCMLやALLでも、MRD陰性が維持された患者さんでは薬の中止(TFR:治療フリー寛解)を目指せることが分かってきています。「完全寛解」という言葉から、さらに深い「MRD陰性」という目標が設定される時代になっています。

患者さんが知っておくべきこと

「MRD検査は受けていますか?」と主治医に聞いてみることが、治療の把握につながります。すべての施設・疾患でMRD測定が標準化されているわけではありませんが、大学病院・がん拠点病院では多くの場合実施されています。


Harryからひとこと:
「寛解です」と言われた日の安堵感は忘れられません。でも後になって「MRD陰性かどうかが大事なのだ」と知ったとき、「もっと深く聞けばよかった」とも感じました。寛解はゴールではなくスタート地点。MRDというものさしを知ることで、「本当の意味での治癒」が何かを、患者さん・ご家族が医師とともに考えるきっかけになればと思います。

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