急性リンパ性白血病(ALL)の中でも、特に治療が難しいとされてきたタイプがあります。「フィラデルフィア染色体陽性ALL(Ph+ALL)」です。このタイプは染色体異常によって生じた異常な遺伝子を持ち、再発しやすいことで知られていました。しかし2024年、この難治性タイプに対する画期的な治療成績が報告されました。

化学療法も骨髄移植もなし、それでも93%が2年生存

2024年12月にASH(米国血液学会)年次総会で発表されたデータによると、新規診断のPh+ALL患者20人に対してポナチニブ(TKI)+ブリナツモマブ(免疫療法)の2剤併用療法を行ったところ、以下の驚くべき成績が得られました。

  • 完全寛解率:100%
  • 分子学的寛解率(遺伝子検査で白血病細胞が検出されない):85%
  • 2年全生存率:93%(推定)
  • 再発例:0例
  • 骨髄移植施行例:0例

再発ゼロ、移植ゼロ——これは、これまでの治療概念を根本から覆す成果です。従来、Ph+ALLの治療では骨髄移植が標準とされてきましたが、この試験では移植を一切行わずに93%が2年後も生きているという結果が出ました。

移植なしで治せる時代へ

骨髄移植は強力な治療法ですが、前処置の身体的負担、GVHDなどの合併症リスク、適合ドナーが見つかるかどうかという問題もあります。「移植しなくても、薬だけで同等以上の効果が得られるなら」——その可能性が、現実のものになりつつあります。

ポナチニブは第3世代のTKI(チロシンキナーゼ阻害薬)、ブリナツモマブは前回ご紹介した免疫療法薬です。どちらも日本でも承認または試験段階にある薬で、この組み合わせはがん治療における「免疫療法と分子標的薬の融合」を示しています。

Harry からひとこと

「移植が必要ない」という方向性は、患者さんにとって本当に大きな意味があります。ドナーを探す時間的なプレッシャー、適合しないリスク、移植後の長い回復期間——これらを丸ごと省けるかもしれない。もちろんすべての患者に適用できるわけではありませんが、「Ph+ALLならば必ず移植が必要」という時代は終わろうとしています。このニュースを、多くの患者さんとご家族に知っていただきたいと思います。


参考:CancerIT「ポナチニブ+ブリナツモマブ併用はPh陽性急性リンパ性白血病で高い寛解率を達成」(2024年)/ASH 2024年次総会発表データ

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