急性リンパ性白血病(ALL)の中でも、T細胞由来のタイプは「T細胞性ALL」と呼ばれ、ALLの中では約15〜25%を占めます。このT細胞性ALLは、B細胞性ALLに比べて治療が難しいとされてきましたが、2023年、日本の多施設共同試験から世界トップレベルの治療成績が報告されました。
全国125施設の共同研究で達成した成績
新潟大学医学部の冨田章裕教授らを中心とした研究グループが、全国125施設で実施した多施設共同臨床試験の結果を2023年に発表しました。
- 3年無イベント生存率:86.4%(従来の国内試験では約70%)
- 3年全生存率:91.3%
「この成績は世界でもトップレベルであり、世界における今後の治療方針にも大いに影響を与えることが予想されます」と研究者たちはコメントしています。
放射線治療や移植を減らすことにも成功
今回の試験では、単に生存率が上がっただけではありません。副作用が強い「頭部への予防的放射線照射」や「造血幹細胞移植」を受ける患者の割合を減らすことにも成功しました。つまり、「よく効いて、体への負担が少ない」治療の実現です。
成績改善のポイントは2つ。T細胞性ALLに特有の効果を持つ「ネララビン」という薬の使用と、L-アスパラギナーゼ・デキサメタゾンの投与法の工夫です。
Harry からひとこと
白血病と一口に言っても、AML・ALL・CMLなど多くのタイプがあり、さらにそれぞれに「B細胞性」「T細胞性」などのサブタイプがあります。それぞれに対応した治療の進歩が、着実に進んでいます。今回の研究が示すのは「日本の研究力と、全国の医療機関が協力することで、世界トップの成績が生まれる」ということです。日本の医療チームへの敬意を改めて感じます。
参考:新潟大学プレスリリース「T細胞性急性リンパ性白血病治療の改善」(2023年5月)/AMED研究成果情報(2023年5月)
