2019年3月26日、日本の白血病治療に歴史的な一ページが加わりました。CAR-T細胞療法「キムリア(tisagenlecleucel)」が、日本で初めて承認されたのです。「自分の免疫細胞を改造して、白血病を攻撃させる」——かつてSFのように語られた治療が、現実になった瞬間でした。
CAR-T療法とは
CAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法は、患者自身の血液からT細胞(免疫細胞)を取り出し、遺伝子操作でがん細胞を見つけ出す「レーダー機能」を持たせてから、増やして体内に戻す治療法です。改造されたT細胞は、白血病細胞の表面にある「CD19」というタンパク質を目印に攻撃します。
治験での圧倒的な効果
キムリアの治験では、再発・難治性のB細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)の患者における全寛解率は82%(50例中41例)を記録しました。従来の化学療法では「もう打つ手がない」とされていた患者が対象です。「再発・難治性」という最も治療が難しい段階での数字として、これは非常に高い奏効率です。
「3,349万円」と高額療養費制度
キムリアの薬価は1回あたり3,349万円。報道で大きく取り上げられた数字です。しかしここで大切なのは、日本の高額療養費制度です。自己負担額には上限が設けられているため、実際の患者負担は月数万円から数十万円程度(所得に応じて異なる)に抑えられます。世界で最も高価な薬のひとつが、日本では制度の助けを借りて使える——それは、日本の医療保険制度の力でもあります。
Harry からひとこと
キムリアの承認を聞いたとき、「白血病治療はここまで来たのか」と思いました。自分の細胞を改造してがんと戦わせる——まるでSF映画の話のようですが、実際に保険適用で使えるようになっています。もちろんすべての患者に使えるわけではなく、条件もありますが、「再発・難治性でも82%が寛解」という数字は、かつてなら絶望しかなかった段階にいる患者とご家族への、本物の希望だと思います。私の妻が発症した頃にはなかった薬が、今は存在する。医療の進歩に、改めて感謝します。
参考:ケアネット「国内初のCAR-T『キムリア』が承認」(2019年3月)/中医協総会議事録(2019年5月)
