「白血病の薬は一生飲み続けなければならない」——そう思っている方も多いかもしれません。しかし慢性骨髄性白血病(CML)の分野では、今、「薬を卒業できる患者」が現れています。

TFR(無治療寛解)とは

TFR(Treatment-Free Remission:無治療寛解)とは、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)という分子標的薬による治療を中止した後も、白血病の遺伝子(BCR-ABL)が検出されない状態が続くことを指します。簡単に言えば、「薬を飲まなくても、がんが抑えられている状態」です。

佐賀大学の画期的な研究結果

2020年、佐賀大学医学部の木村晋也教授らは、ランセット・ヘマトロジー誌に注目の研究結果を発表しました。初診時からダサチニブ(TKIの一種)を服用し、BCR-ABL遺伝子が1年以上陰性を維持できた患者を対象に薬を中止したところ、なんと55%の患者が中止後も再発しなかったというのです。

さらに驚くべきことに、服用期間の中央値はわずか約40か月(3年4か月)。従来「TFRを目指すには最低5〜7年は必要」とされていた常識を大きく塗り替えました。これは「初診時からのダサチニブ中止試験としては世界初の報告」でした。

「再発したらまた飲めばいい」という安心感

TFR中止試験でもう一つ重要なのは、中止後に再発しても多くの場合、再び薬を再開すれば寛解を取り戻せることです。つまり「試してみる価値がある」という選択肢になっています。日本血液学会の2024年版ガイドラインでも、一定条件を満たす患者では薬の中止を考慮できるとされています。

Harry からひとこと

CMLは、2001年にイマチニブ(グリベック)が登場したことで、かつての「不治の病」から「薬で長期コントロールできる慢性病」へと様変わりしました。そして今、「薬を卒業できる可能性がある病気」にまで進化しています。医療の進歩を、こんなにリアルに感じられる分野はなかなかありません。CMLを診断された方には、こういう未来があることをぜひ知っておいてほしいと思います。もちろん条件はありますし、主治医との相談が大前提ですが、希望の光として受け取っていただければ。


参考:佐賀大学医学部プレスリリース(2020年1月)/木村晋也ほか「ランセット・ヘマトロジー」掲載論文(2020)/日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年)

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