今から60年以上前、白血病と診断された子どもたちの運命はほぼ決まっていました。1960年代、小児急性リンパ性白血病(ALL)の5年生存率はわずか14%。診断は、ほぼ死の宣告を意味していました。

それが今や、94%が5年を生き抜く病気になっています。

数字で見る「奇跡の60年」

年代小児ALL 5年生存率小児AML 5年生存率
1960年代約14%約14%
1970〜80年代約50〜60%約20〜30%
2010年代以降約90〜94%約60%以上

アメリカの研究によれば、小児白血病の死亡率は1950〜60年代と比べて約14倍も低下しています。子どもたちのがんの中で、これほど劇的に改善したものは他にありません。

何がここまで変えたのか

この進歩を支えたのは、一つの「魔法の薬」ではありません。多くの要因が重なった結果です。

まず、1970〜80年代に多剤併用化学療法(複数の薬を組み合わせる治療)が確立されました。それまでは一種類の薬を使うだけでしたが、白血病細胞が薬に耐性を持つ前に叩き潰す戦略に切り替えたことで、生存率が一気に向上しました。次に、中枢神経(脳・脊髄)への転移を予防する治療法が開発され、再発を大幅に減らすことができるようになりました。そして、骨髄移植技術の進歩と、日本骨髄バンク・さい帯血バンクの整備が、移植という選択肢を現実のものにしました。

Harry からひとこと

妻が白血病と診断されたとき、私が最初に調べたのは生存率でした。数字を見てほっとしたことを今でも覚えています。「あの頃に生まれていたら」——そう考えると、今この時代に診断を受けられたことは、不幸の中の幸運だったとも言えます。医療の進歩は一夜にして起きるものではありません。何十年もかけて、世界中の研究者と医師たちが積み上げてきた成果です。今まさに治療中の方には、その積み重ねの上に立っていることを、ぜひ知っておいてほしいと思います。


参考:Our World in Data “Childhood leukemia: how a deadly cancer became treatable”(2024)/米国NCI SEER データベース

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