急性骨髄性白血病(AML)の約30%は、「FLT3遺伝子変異」という特定の遺伝子変異を持っています。このタイプはかつて、特に再発しやすく、予後が悪いことで知られていました。しかし今、この変異をピンポイントで狙う「FLT3阻害薬」の登場によって、状況が変わりつつあります。

「オーダーメイド治療」の時代へ

現在のAML診断では、治療を始める前に「遺伝子検査」を行い、どの遺伝子変異があるかを調べることが標準になっています。FLT3変異のほか、IDH1/IDH2変異、NPM1変異などが確認され、それぞれに対応した分子標的薬が存在します。いわば「自分の白血病の個性(遺伝子タイプ)」に合わせた治療を選べる時代になったのです。

ギルテリチニブの成績

FLT3変異を持つ再発・難治性AMLに対するギルテリチニブ(商品名:ゾスパタ)の国際第3相試験では、化学療法と比較して以下の結果が得られました。

  • 全生存期間中央値:ギルテリチニブ9.3か月 vs 化学療法5.6か月
  • 完全寛解率:34% vs 15.3%

「再発・難治性」という最も厳しい状況での数字としては大きな前進であり、この結果を受けて日本でも承認されています。

「自分の白血病の遺伝子タイプを知る」ことの意義

これらの分子標的薬を使うためには、まず遺伝子検査で「自分のAMLがFLT3変異を持つか」を確認する必要があります。つまり、治療のスタートラインは「検査」です。AMLと診断された際には、主治医に遺伝子検査の状況を確認することが、治療の選択肢を広げる第一歩になります。

Harry からひとこと

妻が発症した頃と比べると、今の白血病治療では「どんな遺伝子変異があるか」を調べることが当たり前になっています。同じ「AML」という診断でも、遺伝子タイプによって使える薬が違い、治療の戦略が変わる。それは怖いことではなく、逆に「自分の病気に一番効く治療を選べる」ということです。FLT3変異という言葉は難しく聞こえますが、「あなたの白血病に効く薬がある」という話でもあります。


参考:CancerIT「再発/難治性のFLT3陽性白血病(AML)にギルテリチニブ」(2019年)/Nature Reviews「FLT3 mutated acute myeloid leukemia: 2021 treatment algorithm」

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