AMLの「再発」という壁

急性骨髄性白血病(AML)は、化学療法による初回治療で完全寛解(白血病細胞が検出されなくなる状態)を達成できる患者さんが多くなりました。しかし、残念ながら一定割合の患者さんで再発が起きます。特に FLT3遺伝子変異 という特定の遺伝子異常を持つAMLは、再発しやすく、かつての治療では対処が難しいとされてきました。

FLT3変異AMLとは

FLT3(Fms-like Tyrosine Kinase 3)は造血細胞の増殖に関わるタンパク質です。このFLT3遺伝子に変異(特にITD変異・TKD変異)が生じると、細胞増殖のスイッチが常にオンになり、白血病細胞が際限なく増殖します。

  • AML患者の約25〜30%にFLT3-ITD変異が認められる
  • FLT3-ITD変異を持つAMLは再発リスクが高く、予後不良とされていた
  • この変異を「標的」に開発されたのがFLT3阻害薬

ギルテリチニブ(ゾスパタ®)── 再発・難治性FLT3変異AMLへの切り札

ギルテリチニブ(商品名:ゾスパタ®) は、FLT3-ITDおよびFLT3-TKD変異を持つ再発・難治性AMLに対して開発された経口FLT3阻害薬です。日本の製薬会社・アステラス製薬が創薬し、2019年に日本・米国などで承認されています。

国際第Ⅲ相試験(ADMIRAL試験、n=371)での主要成績:

  • 全生存期間(OS)中央値:ギルテリチニブ群 9.3か月 vs 化学療法群 5.6か月
  • 完全寛解率(CR+CRh):34.0% vs 15.3%(化学療法比で約2倍)
  • 無イベント生存期間:2.8か月 vs 0.7か月

出展:CancerIT「再発/難治性のFLT3陽性白血病(AML)にギルテリチニブ」(https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/ketueki-syuyou/hakketubyou/post-64005.html)

ミドスタウリン ── 初回治療への分子標的薬の導入

FLT3変異AMLへのアプローチは再発時だけではありません。ミドスタウリン(ライドス®) は、初回の化学療法(シタラビン+アントラサイクリン)と組み合わせて使用する経口FLT3/PKC阻害薬で、日本では2019年に承認されています。初回治療から分子標的薬を加えることで、再発リスクを下げることが期待されています。

AMLの個別化治療の時代へ

AMLは以前「一律の化学療法」で治療されていましたが、現在は診断時に遺伝子パネル検査を行い、FLT3変異・IDH1/2変異・NPM1変異などを確認し、その変異に合わせた薬剤を選ぶ個別化治療の時代に入っています。

今後も新たなFLT3阻害薬や組み合わせ療法の研究が続いており、AMLの治療成績はさらに改善していくと期待されています。


Harryからひとこと:
妻はAMLでしたが、幸い遺伝子変異の詳細を調べた上で治療方針を立ててもらいました。「あなたの白血病にはどんな遺伝子異常があるか」を把握することが、最適な治療への第一歩だと実感しています。FLT3変異が見つかったからといって悲観する必要はなく、今は対応できる薬が存在します。まず主治医に「遺伝子検査の結果を詳しく説明してほしい」と伝えることをお勧めします。

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