2023年8月31日、米国ペンシルベニア大学のカール・ジューン博士らの研究チームは、多くの種類の血液がんに使える可能性のある新しいCAR-T細胞療法の研究成果を、学術誌Science Translational Medicineに発表しました。米国国立がん研究所(NCI)も9月にこの成果を紹介しています。
CD45を狙い、正常な細胞は「編集」で守る
CD45は、ほとんどの血液細胞の表面にある目印です。急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ性白血病(ALL)、多発性骨髄腫など、さまざまな血液がんの細胞にもあるため、これを狙えば幅広いがんを攻撃できます。しかしその反面、CAR-T細胞自身や正常な血液細胞まで攻撃してしまうという問題がありました。そこで研究チームは、遺伝子編集技術の一つである「ベース編集」を使い、CD45たんぱく質のごく一部をCAR-T細胞が認識しない形に変える「エピトープ編集」を、CAR-T細胞と造血幹細胞の両方に施しました。
マウスで効果、数年以内の臨床試験を目指す
実験では、編集したCAR-T細胞は互いを傷つけることなく、さまざまな種類の血液がんの細胞を攻撃しました。マウスでは腫瘍が速やかに縮小し、重い副作用はみられませんでした。数か月後にがん細胞を再び入れても、CAR-T細胞が体内に残っていて反応したといいます。編集を受けた血液細胞は正常に働き、CAR-T細胞の攻撃からも守られていました。まだ動物実験の段階ですが、研究チームはおよそ2年以内に臨床試験に進むことを見込んでいます。
CAR-T療法は、まだ一部の血液がんにしか使えないのが現状です。病気の種類を問わず使える治療を目指す研究は、まさに未来への挑戦。臨床の場に届く日を楽しみに待ちたいと思います。
