「高齢だから、強い抗がん剤は使えない」——急性骨髄性白血病(AML)の高齢患者にとって、長年この壁が立ちはだかっていました。強力な化学療法は体への負担が大きく、70代・80代の患者には適用できないケースが多かったのです。しかし近年、その壁を崩す薬が登場しています。ベネトクラクスです。

ベネトクラクスとは

ベネトクラクスは、白血病細胞が「自然死(アポトーシス)」を回避する仕組みをブロックする分子標的薬です。がん細胞は「BCL-2」というタンパク質を使って、本来死ぬべきところを生き延びています。ベネトクラクスはこのBCL-2を阻害し、がん細胞を死に追いやります。

単独でも使えますが、アザシチジン(DNA低メチル化薬)と組み合わせることで効果が高まることが示されており、この組み合わせが「高齢者AMLの新標準治療」として世界的に普及しつつあります。

国内病院での実績

京都第二赤十字病院の報告(2023年)によると、強力化学療法が適用できない初発AML患者(中央年齢74.5歳)に対してベネトクラクス+アザシチジン療法を行った結果、奏効率(完全寛解+不完全寛解)は80.9%、1年全生存率は65.5%を達成しました。また「外来治療への早期移行により、患者のQOL向上につながる」とも報告されています。

これは「国際治験や国内治験の成績にほぼ匹敵する」成績であり、高齢患者に対する現実的な治療の有効性を示しています。

「外来で飲み薬で治療できる」意味

ベネトクラクスは経口薬です。従来の強力化学療法のような長期入院が必要なく、通院しながら治療を受けられる場合があります。高齢の患者にとって、「入院しなくてもいい」「自宅で生活しながら治療できる」という選択肢は、医学的な効果と同じくらい重要です。

Harry からひとこと

妻の白血病は、幸いなことに若年での発症でした。しかし白血病全体を見ると、高齢の方の発症も決して少なくありません。「高齢だから治療が難しい」という時代は、少しずつ変わっています。外来で飲み薬で治療できる選択肢が増えることは、患者さんだけでなく、ご家族にとっても大きな意味があります。治療の選択肢が広がること、それ自体が希望だと思います。


参考:京都第二赤十字病院 血液内科「高齢者急性骨髄性白血病の治療に新たな光明」(2023年2月)/FDA ベネトクラクス承認情報

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