白血病の治療を支える「研究グループ」の存在
「白血病の治療成績が向上した」という成果の裏には、全国の病院が連携して行う多施設共同臨床試験の積み重ねがあります。1つの病院では集めにくい患者数でも、全国で集めれば数百〜数千例になり、統計的に信頼できる結論が出せます。日本には白血病の治療研究を牽引するいくつかの専門グループが存在しています。
JALSG ── 成人白血病の司令塔(1987年〜)
JALSG(Japan Adult Leukemia Study Group、成人白血病治療共同研究機構)は、1987年に設立された成人の白血病・骨髄異形成症候群・多発性骨髄腫を対象とする臨床研究グループです。
- 参加施設数:173施設(国内最大規模)
- AML・ALL・CML・MDSの標準治療確立に貢献
- フィラデルフィア染色体陽性ALLへのイマチニブ併用療法(Ph ALL202)を世界に先がけて大規模試験で実証 → 完全寛解率96.2%
- 国際学会(ASH・EHA)でも成果を発表し続けており、「国内最大、国際的にも活躍する研究グループ」
出展:JALSG公式サイト「患者さん・ご家族の方へ」(https://www.jalsg.jp/to-patients/patients_and_family)
JCCG / JPLSG ── 小児がん・小児白血病の研究グループ
JCCG(Japan Children’s Cancer Group)は小児がん全体を対象とし、その傘下の JPLSG(Japan Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group) が小児白血病・リンパ腫を専門に研究しています。
- 小児ALLの標準治療(JPLSG-ALL-B/T プロトコール)を国際基準に基づいて策定・更新
- 東京大学・国立がん研究センター・全国144施設と連携した大規模試験を実施(2024年発表)
- 2024年の研究では小児ALL全体で5年生存率94.3%を達成(1,800名超の患者を追跡)
- 発症年齢や遺伝子異常に基づくリスク層別化治療を推進
出展:JCCG公式サイト(https://jccg.jp)
JSHCT / JDCHCT ── 造血幹細胞移植の全国ネットワーク
JSHCT(日本造血・免疫細胞療法学会) は、骨髄移植・末梢血幹細胞移植・臍帯血移植・CAR-T細胞療法などの細胞治療を専門とする学術団体です。
- 日本国内では毎年約5,000件前後の造血幹細胞移植が実施されている(骨髄・末梢血・臍帯血合計)
- 移植成績データは JDCHCT(日本造血細胞移植データセンター) が一元管理・集計・公開
- ガイドライン改訂・施設認定・ドナー管理など移植医療の質を全国的に担保する役割
- 近年はCAR-T・ハプロ移植・臍帯血移植の比較研究でも精力的に論文を発表
出展:日本造血・免疫細胞療法学会(https://www.jstct.or.jp)
こうした研究グループが患者に与える意味
患者の立場から見ると、「JALSGの試験に参加している病院で治療している」ということは、その治療が最新の科学的根拠に基づいている可能性が高いということです。主治医に「この治療はどの研究グループのプロトコールですか?」と聞いてみることも、治療を理解する一助になるかもしれません。
また、臨床試験への参加は義務ではなく患者の自由意思です。参加しても標準治療から大きく外れることはなく、最新の治療にアクセスできるチャンスでもあります。担当医とよく相談して決めてください。
Harryからひとこと:
妻の治療を経験するまで、こうした研究グループの存在を知りませんでした。「なぜこの病院でこの治療をするのか」が分かると、医療への信頼感が増します。JALSGやJCCGの研究者たちが長年積み上げてきたデータが、今日の治療成績の向上につながっています。一人ひとりの患者さんの治療記録が、次の患者さんを救うエビデンスになる。その連鎖の大切さを、このサイトを通じて伝えていきたいと思っています。
