白血病と診断された若い女性に、大切な問いがあります。「治療が終わったら、子どもを産めるの?」——抗がん剤や放射線照射は、卵巣機能に影響を与えることがあります。しかし今、「妊孕性温存」という選択肢が、その問いに希望を与えています。

実際に出産した事例

京野アートクリニックが報告した症例では、20歳でALL(急性リンパ性白血病)と診断された女性が、化学療法開始前に卵子を10個凍結保存しました。その後、放射線照射と骨髄移植を経て寛解。そして——

  • 凍結から約5年後(2012年)に第1子を出産
  • 凍結から12年後(2019年)に第2子を出産
  • 現在、第3子に向けた凍結胚が保存中

白血病の治療を乗り越え、移植まで受けた女性が、2人の子どもを産んでいる。この事実は、若い患者さんとご家族にとって、大きな希望になるはずです。

妊孕性温存とは

妊孕性温存とは、がん治療が妊娠能力に影響を与える前に、卵子・受精卵・卵巣組織を凍結保存しておく医療行為です。女性の場合は卵子凍結・受精卵凍結・卵巣組織凍結、男性の場合は精子凍結が選択肢になります。

重要なのは「治療開始前に相談すること」です。化学療法が始まる前に凍結保存できれば、治療後の妊娠の可能性を残せます。診断直後に妊孕性の話をするのは心理的に辛いこともありますが、まず選択肢として知っておくことが大切です。

日本での整備状況

日本生殖医学会や国立がん研究センターなどが妊孕性温存に関するガイドラインを整備しており、妊孕性温存を専門に扱う外来を設ける病院も増えています。日本がん・生殖医療学会(J-SFPC)のウェブサイトには、妊孕性温存医療を実施している施設の一覧が掲載されています。

Harry からひとこと

私たちには双子がいます。妻が白血病になったとき、「もう二度と子どもを産めないかもしれない」という恐怖も、頭をよぎりました。幸い、妻は治療の前に妊孕性について考える必要がある段階ではありませんでしたが、若い患者さんにとってこの問題は切実です。「治療と妊娠の両立」は、医学的に可能な時代になってきました。選択肢を知ることが、未来の選択につながります。まず主治医に相談することを、ためらわないでほしいと思います。


参考:京野アートクリニック高輪「急性リンパ性白血病患者さんへの妊孕性温存、その後の妊娠・出産についての報告」/日本がん・生殖医療学会(J-SFPC)/国立がん研究センター がん情報サービス

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