Ph陽性ALLとは ── かつての最難関、今の好成績

急性リンパ性白血病(ALL)の中でも、フィラデルフィア染色体(Ph染色体)陽性のALL(Ph+ALL)は、かつて最も治療が難しい白血病の一つでした。白血球を無制限に増殖させるBCR-ABL1という異常遺伝子を持ち、化学療法だけでは再発しやすく、長期生存率が低かったのです。

しかしイマチニブの登場(2001年)以降、TKI(チロシンキナーゼ阻害薬)を組み合わせた治療が普及し、成績は劇的に改善。さらに近年、「化学療法を使わない新しいアプローチ」が注目されています。

ポナチニブ+ブリナツモマブの「化学療法フリー」療法

2023〜2024年に報告された臨床試験の成果が注目を集めています。ポナチニブ(第3世代TKI)+ブリナツモマブ(BiTE抗体)という組み合わせで、従来の強力な化学療法を使わずに高い寛解率を達成しました。

新規診断Ph+ALL患者での成績(第2相試験)

  • 完全寛解率:100%
  • 分子学的寛解率:85%
  • 2年無イベント生存率:93%
  • 2年全生存率:93%
  • 造血幹細胞移植を行った患者はゼロ、再発例もゼロ

出展:CancerIT「ポナチニブ+ブリナツモマブ併用はPh陽性ALLで高い寛解率を達成」(https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/ketueki-syuyou/hakketubyou/post-69257.html)

なぜ「化学療法フリー」が重要なのか

強力な化学療法は感染症・臓器障害などの重大な副作用を伴います。特に高齢者や合併症を持つ患者さんには、化学療法の毒性が治療の大きな障壁でした。

ポナチニブ+ブリナツモマブという組み合わせは:

  • 化学療法なしで高い寛解率を達成できる
  • 高齢者・合併症を持つ患者にも適用できる可能性がある
  • 骨髄移植が不要になる患者が増える可能性がある

ブリナツモマブとは(復習)

ブリナツモマブ(ビーリンサイト®)はT細胞とB細胞白血病細胞を同時に引き寄せ、白血病細胞を攻撃させる「BiTE(二重特異性T細胞誘導体)抗体」です。免疫を利用した治療として、白血病治療に革命をもたらしました。以前の記事(成人ALL の寛解率85%達成)でもご紹介しています。


Harryからひとこと:
妻のAMLとは少し違いますが、Ph陽性ALLの治療の進歩はめざましいと感じます。「完全寛解率100%・移植ゼロ・再発ゼロ」という数字は、少し前には信じられないものでした。白血病の世界は毎年のように「これまでの常識を覆す」研究が出てくる。その速度に希望を感じながら、このサイトの更新を続けていきたいと思います。

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